店長からのご挨拶

キノエネとの出会い

私がキノエネ醤油を初めて食べたのは、3歳の頃です。
いや、その前から出会っていたのかもしれませんが、醤油を始めて味わった記憶があるのは3歳です。
生まれてこの方、家庭で食べる醤油はキノエネでした。
というのも私の父が運送会社を営んでおり、父の会社では主にキノエネ醤油を運んでおりました。
得意先ということもあったのかもしれませんが、私の家庭では食卓にあるのはいつもキノエネ本仕込で、おいしい醤油だと父は言っていました。
私にとっては、おいしい醤油もなにも他の醤油を味わう機会は、外食したときだけで、他の醤油で食事をしたこともありませんでしたので、
醤油といえばいつもキノエネの味で、普通の醤油だったわけです。
やがて、外食をするようになると、美味しいものかどうかは別として、外で食べる醤油と家で食べる醤油の"違い"は分かるようになりました。
意識はしておりませんでし、慣れがあったのは当然ですが、外食したときの味になんとなく違和感があったのは覚えています。

一本からの贈り物

贈り物で醤油なんてと思う方がいらっしゃるかもしれません。実際に私もそうでした。
お中元、お歳暮の時期になると、我が家ではいつも醤油の箱が山積みにおいてありました。
すべてお世話になった人に贈り物としてお届けするものでした。
当時から私はもっといいもの贈ればよいのにと思っていましたが、父の仕事上、止むを得ないものと納得しておりました。

やがて、父が運送会社をやめ、私は当時父が経営しておりました会社(当社)に入りました。当時、当社は工事業を営んでおりましたから、醤油などは全く関係のない業種です。
しかし、夏前になるといつも、昔と同じようにキノエネの段ボール箱が20ケースおいてあります。
運んでもいないし、当社の業務とも関係がない、そして、いくらなんでも父の家庭、当社の社員の家庭で分けても多すぎる量です。
そこで担当のものに聞いてみると、当社からのお中元でお送りするものの他、知り合いでお中元に使いたいというお客様がいらしたのです。
輸送されたままの梱包のままですから、お中元としては、見てくれも悪く、当社からのお中元ならまだしもお客様は大丈夫なのかと思っていました。
たまたま、お客様が当社にいらした時に
「お中元なのに、あんな外装ですみません」
と申してみると、
「いやいや、そんなの関係ないよ。うちのお客さん、昔一度、お中元であげてから、いつも当てにしてて、あれじゃないともう駄目って言うんだよ。ここでしか手に入らないから来年も頼むよ。」
とおっしゃっるので、
「しかし、醤油ではお中元としては…」
と口を挟むと、
「だから、そんなの関係ないんだって。俺は醤油一本でもお客さんに贈るよ。当てにされてるし、喜んでもらえるから。」
その時、我が家になぜ、醤油の箱が山積みになっていたのか分かったような気がしました。また、この会話は何年も私の頭に残っておりました。
どうやら、このお客様はもう10年以上もお中元の時期に当社からキノエネ本仕込を買って頂いていたようです。

今年もそのお客様から12ケースのご注文を頂きまして、当社に商品をとりにいらっしゃいました。
「おにいちゃん。パソコンやってんだったらさ、インターネットで販売してくんないかな。ほしい人いるけど、手に入らないでみんな困ってんだよ。」
私はその言葉を簡単に受け流すことは出来ませんでした。なぜか醤油一本をお贈りしたいと思うようになりました。
私にとっては慣れ親しんだ"普通の味"ですが、お客様にとっては一本でもお贈りしたい逸品なのだと。
その思いをもって、当店を開業いたしました。
当店では「一本からの贈り物」として一本から梱包して、その梱包をできるだけ傷つけないようお贈りしています。
なぜなら、お客様からお客様のお客様への大切な贈り物としてお使いいただけるように、そして当店からお客様への大切な贈り物ですので。

至らない点ございますが、なにとぞよろしくお願い申し上げます。

平成23年8月
運営統括責任者
砂川 大典